「小説挿絵『ピンクネオン街 無料案内人』」

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  • 公開日 2021年09月15日

小説『ピンクネオン街 無料案内人』著・もちねこ丸さん
https://fujossy.jp/books/21951
 


2人目_「虚言蜥蜴」の騙し方⑭
https://fujossy.jp/books/21951/stories/447901
挿絵描かせて頂きました。
*****




「『俺はこの街で愛されない』って言葉、取り消してください」

 広瀬は珍しく、苛立ったように拳を握りしめていた。

「俺は、貴方のことを、本気で、愛してます」

 視界の隅に、目を丸くしてこちらを見る野火山が映った。ご丁寧に、読みかけのグラビアを置いて、興味津々の様子でこちらを見物している。
 いい気なもんだ。
 こっちは、返す言葉が見つからず、ただ間抜けに、広瀬の顔を眺めるしかない。

「俺はまだ、野火山さんの言う、悪い恋とか、いい恋とか、全然分かりません。ただ、俺は、伽藍さんのことが、好きで、大好きで、貴方のためなら、何だってやれます」

 そう言われて、ようやく、皮肉めいた言葉が溢れた。
「……盲目の時点でろくな恋じゃねぇよ」
「でも俺は今、この恋を、後悔してません」

 何を言っても、無駄だと悟った。
 俺を抱いた時の、広瀬を思い出す。
 あの日も、こんなふうに据わった目で、広瀬は、俺を見据えていた。

「俺の行く末がどうなっても、このまま貴方が、俺を振り向かなくても、俺は……、俺は、貴方だけを……」

 愛しています、と、言うのが、分かった。

 だからとっさに、その口を手で塞いだ。

 広瀬はモゴモゴとわめいて、それから、しょぼんと耳と尻尾を垂れさせた。
 広瀬がおとなしくなったのを確認して、ゆっくりと、口から手を離す。

「……化け物からの恋は、受け取れませんか」



***
小説お借りしています。



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