「小説挿絵『フラワーコード』」
小説『フラワーコード』著・晴れ時々猫さん
https://estar.jp/novels/25963386
p13~【第一章 記憶(12)】
https://estar.jp/novels/25963386/viewer?page=13
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ざーっと外から聞こえる強い雨音。
いつの間に雨が降り出したのか、いつの間にこれだけの雨足の強さになったのか。
けど、その音を聞いて、何故か心にポツンと浮かんだ言葉。
「また降りましたね」
俺の心の声を、まるで代弁するような声が真隣から聞こえ、俺は驚いて華頂さんを見上げた。
すると、彼も驚いたように俺を振り返り、一瞬可笑しな沈黙が俺たちの間に下りた。
「……あ、いや……、あれ? なんでそんなこと言ったんだろう。いや、あの……違うんです。俺、結構大事な時に雨に降られることが多くて」
「えっ、俺……っ、僕もです!」
ビックリして言葉を返すと、華頂さんも目を丸め、その後で楽しそうに笑った。
「土田さんも雨男なんだ! 二人揃ったから雨が降ってしまったんですかね?」
「あはは! かもしれないですね」
そう言って頷くと、華頂さんは笑顔のまま、もう一度見えなくなった雨を見つめるようにドアへ視線を送った。
「今日は降るとは思わなかったな。でもだったら……、俺にとって今回の仕事は何か意味があるのかもしれない」
そう言った声はえらく真剣で、「大事にこなそう」と言った彼の声が、耳にこびり付いた。
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