「小説挿絵『針の止まった子供時間』」
『針の止まった子供時間』著・晴れ時々猫さん
https://estar.jp/novels/25764762
P65~【現在:恋の名前】3
挿絵描かせて頂きました。
https://estar.jp/novels/25764762/viewer?page=65
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息が白く目の前を揺らめく。その靄の先。
きちんと正装している見たことないほど綺麗な男が、のぶと杉原さんに笑顔でご祝儀を渡していた。
ボロボロに泣いているのぶの背中を、杉原さんは優しく撫でていて……。俺の瞳からも涙がこぼれて落ちた。
「……梓……」
聞こえるほど大きな声で名前を呼んだわけじゃない。だけど梓は俺に気付き、のぶに見せていた笑顔を一瞬消した。
だけど、すぐにふんわり微笑むと、のぶに視線を戻してその腕をとんっと叩いた。
「じゃ、僕はこれで。お幸せに」
そう言って立ち去ろうとするから慌てて引き止めようとしたけど、先にのぶが叫んだ。
「待って! 柄沢さんに会って行って!」
そう言ってくれるのぶに、ちょっと感動した。
けど……。
「もう会ったよ」
そう言って立ち去って行く梓に、のぶがはっと俺を振り返った。
「柄沢さん!」
早く引き止めろと言わんばかりに名前を呼ばれる。
分かってる。分かってるよ、このチャンスを逃したらもうおしまいだって。きっとこれが千載一遇のラストチャンスだ。
「梓!」
呼び止めるだけじゃ足りない。
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(小説お借りしています。
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