伊坂幸太郎先生の小説『PK』の表紙デザイン案です。作中のアイテムや印象に残った言葉を使って作成しました。

まず、作中で引用されたアドラーの言葉「臆病は伝染する。そして、勇気も伝染する」を広がっていく青と黄の色で表現しました。この言葉、特に『勇気の伝染』は、個人的に作品の主テーマになっているのではないかと感じました。また、伝染という熟語には染まるという漢字が使われているので、色が染みわたっていくような描写にしてみました。

次に、もう一つ作中で引用された言葉から、チャップリンの「ひとりひとりはいい人たちだけれど、集団になると頭のない怪物だ」を線の集合体で描写しました。このセリフにおける『集団』は、多勢という名の力を持った人間の集まりであると感じました。そこから、集団の内にいる人は優越感等の一種のナルシシズムのようなものを抱いていて、外から見る人はそれに対して異様さや怖さを感じている、といった構図をイメージしました。
線を一本だけ見ても、特に恐怖心などを感じることはないと思うのですが、イラストのように、集まって集合体として形を成すことで「怖さ」や「美しさ」といった感情を抱かせるものになると思い、チャップリンの言葉の比喩として使用いたしました。
また、線は人間のメタファーでもあるので、一人一人違った個人であることを表現するため、定規ツール等を使わずに一本一本手描きで仕上げました。

最後に、ストーリーに関わるイラストを描きました。まず、作中に出てくるアイテムとして印象的だった、サッカー（ボール）、電話、超能力（握手）を選びました。また、白い光が枝分かれしていく絵で、主軸の世界とそこから分岐して様々な未来が作られていく様子を表現しました。