「君というひと」
ぼくたちは広い野原で出会うことも
考えたこともなかった。
学校には教育があり、食事があり、
性別があり、ぼくらはそこでクソして
大人と呼ばれる日が過ぎるのを待つ。
きみは野原にいる2人の絵を描いた。
きみはどうやら蝶になりたいようだが
僕も君と同じ蝶にされていた。
ぼくは蝶になりたいと彼女に伝えたことは
一度もなかった。
彼女の野原にぼくの野原はなかった。
野原だけを描いたぼくに彼女は心底ガッカリした。
ぼくは君の描く蝶になれば良かったのかな。
ぼくは大人と呼ばれる日をとうに過ぎて、
野原で出会った人と結ばれる。
きみの描いた野原はどこにもなかった。
ぼくたちは同じ野原で出会い、別々のいきものでも十分だった。
ぼくは蝶にはならずあの時の僕のままだったけれど、
君はあのとき描いた蝶にちゃんとなれただろうか。
あのとき描いた野原にちゃんと会えただろうか。
そんなことを覚えているのはぼくだけで、
君はとっくに君のユートピアを築いているかもしれないね。
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