「りゅうとほしぞら」

  • 1
  • 1,776
  • 0
  • 公開日 2019年12月18日

1、梶木橋
捻じれた町グンゾの西のはずれにある梶木橋は、自死の名所だったが、龍の塒となってからは違法者以外誰も寄り付かなくなった。
グンゾ自体、世界から見捨てられ腐り始めていた。
その後、龍討伐をする長い紐の男グリアが現れ、住人を片っ端から吊るし上げ皆殺しにすると、龍が笑ったという。

2、根の春
神都プマの北に聳える聖山ジャカイヤにある月を突く樹プルジの根が作った広大な地下空洞は、常に穏やかな光と熱に包まれ「根の春」と呼ばれ禁域とされている
その下層で水と共に眠る目の無い獣ヌフの躯は、呪われ、根も触れようとしなかった
だが、いつしか、息をしない小人が棲みついた

3、双子の巨人ザルオル
激しい嵐の日。雷に翼を砕かれた空の巨人ザルは、かつて一つになり大陸を支配した双子、海の巨人オルの肩に降りた。しかし海底に生きる蟲たちに巣食われていたオルは、悲鳴を上げ、脆くも崩れ去った。
その後、ザルは深海で息を失い、オルの肉は大海流の循環に攫われた。

4、怨の食卓
先の大戦で敗北した怨国は死者が死を認識するため驚くべきことに殺人は極刑となり殺罪人はファミリーの道具となる。多くのファミリーは、殺罪人に爆弾を埋め込み、名前を書き換え、遠方に飛ばし、その土地に恐怖と憂鬱を与える。怨国の罰はこの連鎖に怯えることであり、許されることはない。

5、ツァラトゥストラの教説
“それとも、我々を軽蔑するものを愛し、幽霊が我々を恐れさせようとするときに、それに手を差し出すことであろうか?こうした全ての極めて重く苦しいものを、忍耐強い精神はその身に引き受ける。荷物を背負って砂漠へ急いで行く駱駝のように、精神は彼の砂漠へと急いで行く。”

6、ワナ国の三柱神ブシディア、メガ、ミィラ
契約の国を宣言するワナ国では薬草学が発達し人々は恍惚状態で未来の光景を見続け赤子と化して死ぬ。
峠の神コドムの騎士だった三柱神は、手足なき王ムコの子5600人を荒川オウナに放り込み殺し、野営地で禁じられた酒瓶を空けて「楽しむ」ことを約束した。

7、フエの旅
異形と化した三柱神が光落の滝壺で死の眠りに就こうとしていた時、その頭上で、村を抜け出した目の民フエが右腕を切り落としたその相手は、素性を隠した風の国スアの血無し姫イバルである。
野盗として頭角を現していたイバルはその後姿を消し、フエは西の足切りの谷キュブへ辿り着いた。

8、上級剣士スポポビン・ポーン
「オトナタ」と呼ばれる技を使用するポーンの攻撃は自身の名を連呼するのみ。
予測できず、意味もわからない。
だが、ポーンの実家の地価が飛びぬけて高い事が明らかになっている。
まさに言葉を知り尽くしたポーンならではのブレイキング・タイムと言えよう。

9、異物ジャ・ス
ポーンの生家で常に移動しているジャ・スには最大で81人の家族が住んだが、今は老いたスポポビン夫婦と一匹の蛙が住むのみである。
王国の古文書には、ジャ・スが活躍した60000年前の諸島大戦のことや、算学者だった一代目スポポビンが夜の星を纏めて食べた話などが記されている。

10、蛸士オス・オレハゲの発見
歴史上唯一蛸を飼い慣らしたオレハゲは戦場のみならず諜報においても独特の活躍をした。
彼が「蛸の誓い」と呼ぶ五つの刀傷は、大蛸を漣と思って戯れていた幼少時のオレハゲがその瞳を見つけ語りかけるに「お母さん」と呼んじゃった事に起因すると後に記している。

11、獣王ラマダの弟子たち
宿場町ピロで人格者として名を上げていたラマダは弟子を選ばす、書物を集めるのが趣味で人々に蔵を開き読むことを勧めた。
しかし、晩年書の本質をカルトだと見た彼は所有する全ての本を焼き、巨獣蠢く大陸グァナへ移る。
追う弟子が無い事にラマダは嘆かなかった。

12、熱き風
獣の大陸ロンブの北、砂の国ザムの東、最も太陽に近く常に熱風の吹く港町ジュアから現れた盗賊が熱き風である。
彼らが使用する翼無き竜モーラに乗る秘術は͡、千年前の火の戦争で唯一崩落しなかった砦アイを守る孤独な民ウルマの戦士ボラーが、悪霊ジャイゴを討伐した報酬として与えたものだ。

13、海神の洞窟
港町ジュアの東に点在する群島に隠れるベシヤは、構成する特殊な珊瑚アシラの呼吸により海底と海面を往還する幾重にも隠れた島である。
迷宮のように入り組んだ洞窟の深部には、五千年前の海神ナパームの像が形を留め、またモーラの幼体が生息するというが、辿り着いた人間は少ない。

14、太陽の君
雲が包む空島カラクの美しい女エンは一度で百人以上の子を産みよく愛したが、子が子ではなくなると嘆いて酒樽に詰め火の山に捨てて餓鬼の餌にした。
夫はシヌという名の犬だった。生き残りの子で弓使いのジェバは全身を火で焼かれていたが、育ち、母を埋めたカラクを地獄にして喜んだ。

15、逆樹王ドガ
エトリアは20万年前の魔法により夜に包まれ、水が大地を覆い、岩が空に浮遊し、砕かれた火が彷徨う忘れられた土地である。
一度滅びたエトリアの植物は、水面を漂う小さな太陽が現れると、追って逆さに芽を伸ばし繁茂した。
ドガはエトリアの逆樹でも巨岩の城に巣食う王である。

16、蟲使いの一族ダルマ
星も見えず、地磁気も狂っているエトリアの鳥の歌は光の下で発達した雅歌よりも禍々しく入り組んでいる。
ドガの上の巨城を発見した蟲を使う漂流者ダルマの一味は、時間をかけて先住の人面鳥ヨルの歌を覚え、生き延びてエトリアの闇を治めた。
より深く沈黙するその海を除いて。

17、明るき男ドスゲタナス
腐海の背骨に蠢く巨大環形動物ヌシャイーの燃える十二指腸から何でもかんでも喋る男ドスゲタナスが救出された。
不安要因の帰還にクサイ村の長は光る毛皮を贈りマーキング。
かつての仲間、顏増えのテントと荷物増えのポークらに呼びかけ、三人をまたすぐ村外へ旅立たせた。

18、センチメンタル
過疎を憎み都を巡るしかない旅芸人一座だが、ドスゲらはこの時多額を示されれば猿の成人式にも行ってしまう程人生に飽いていた。
船欠く入り江ザボラを遥々訪れたドスゲらが旗を物差しにする笑劇をやり遂げると、帰路で挙がるクサイ村の悪点の数は桁違いに増え、大いに盛り上がった。

19、悪鬼四間丸
石落谷出生の四間丸は両親を殺し、村を焼き、山に潜み通者を次々と襲い、無残な死体で四つの山を彩る悪童であった。
だが後に腕を認められ盗賊の頭となり、果ては政府要人の用心棒にまで成り上がる。
好色で、襲われた女は多く四間丸の子は五千人にも及ぶと言い、名乗り出る者さえ現れた。

20、野衾梅上春之進
少年外国人専門の男色趣味があり腕も立つ春之進は、地方の港を回って夜に子を攫い、犯し、見世物小屋へ連れて行き切り裂いて見せ、客前で命乞いする少年を生で食った重罪犯罪者であった。
しかし腕を認められ政府の用心棒となると子を作り、その数二千とも言われる性豪と化した。

21、化山猫七十一本竿
梅上の捨子で樽勝木岩の山猫に拾われた一本竿は若くして暗殺団彫刻刀を結成。間者として政府に忍び、地底魔窟アカシキを根城とする荒れ猪ノアの軍団を一掃。
晩年は山猫として人生を豚骨に捧げ、性豪化する武芸者を憎み、遊郭に火を付け、北山道黄巻門にて、弟子の蝗の介錯にて自決。

22、地蔵枯らし静木ヶ原夕月
火の山の神成素戔嗚の転生である夕月は、しかし女傑であり二刀で無刀の男を見れば切りつける神懸りであった。夕月の怒りは、傲慢な護謨の車輪のように怒張し、またある時は果てなく伸び雪原の狐老のように煌めいた。
しかし組に属さぬ夕月は僧兵による拷問を恥じ、自決する。

23、歓喜門ザマン
冥府道二十三門の第一門ザマンのある灰島はかつては静かな森に覆われた巡礼の絶えない島だった。
しかし五十年前、クレーターワームが蟲島を飲み禍大橋が崩落すると海賊が押し寄せた。
そして、歓喜門の守り手一ッ星一族を始めとする島民の全てが、島のみならずこの地上から姿を消した。

24、西海の禁域ルルイエの龍オドラ
西海は海底山脈が果てて剣の山を作り、満潮時には衝突する海流が腕を挙げるように逆立ち、嵐は静まることを知らない怒りの海であるが、その先、南の禁域ルルイエでは根城とする雨の龍オドラの財宝伝説が後を絶たず、無謀な荒くれが船を進めては命を落とした。

25、小芥子村序数録
山間の湖畔で多数指折りの聖人を生みなお名を挙げぬ小芥子村は、訪れた山賊も唖然とする程呑気な世捨て人の村である。
しかし夜、小芥子の村人に見られた賊は忽ちに記され、名は戻ることがなく、また小芥子の人が剣を振り作る紙の傷からは、鐘の数ほど奇獣が産まれたと伝わっている。

26、帝王斬りのハラム
赤き都イゴークに暮らす月割りの民アルシュルフが生んだ大地魔法師ハラムは親を憎み子も無かった。しかし闇術を極め夜を着ることができた唯一の女である。
ハラムが敵軍の刀剣を一身に引き付けて呑み込み流星に変えて放つと、その重さは天使をも道連れに兵たちを纏めて空へ飛ばした。

27、老海賊トゥルカニ
まだ海が一繋ぎに腐る前、氷河の内海バベルに浮かぶ孤島スモウグの溶けぬ氷柱の村デサンジにトゥルカニは生まれた。
言葉も知らぬまま、荒鷲ムーシャに攫われその雛と霊峰ジュリアの崖で育ったこの男は、若くは大鷲に乗り恐れられ、老いては海賊に転身、未知を求め南海へ舵を切った。

28、子を探す三ッ耳獅子
黒岩沼の土籠八重は山上の身分ある男に好かれ贅を知ると父を井戸に投げ母の口へ毎夜糞を塗りに行った。
男は八重を医者に見せ片腕を落とし蔵に置いた。
詐病の八重は暗闇で三ッ耳獅子と名乗り孕んだ八つ子の七人を殺し息絶えた。
こうして黒岩山水を鬼で治める斑鮒は産まれた。

29、極卒十枝夢嵐
西の荒地、巨人の市を抜け、砂の吹き荒れる死の壁の奥に栄える渇きの国ネムは、三千年前に割れた大地より出でし赤竜が今も空を制する幻の土地である。
竜が眠る天空山その一門に立つ十枝夢嵐は、古く山に籠った神職の使いだと言うが、誰の言葉にも耳を貸さず、ただ来る者を拒み続ける。

30、スプーン返して
2051年5時0分アマリ沖の人工島P8で人類史上初の情報浮揚が発生。地球標準宇宙端が溶融収縮。太陽生命群コマンド樹に寄生する言語第三平面を希望観測する人々の非に実質上の死を審判した。
ミナミらは古式船で火星を脱出、嫌恒星航法「機織り」で定規椀を辿り、銀河の裏側へ向かった。

31、ハイパークロスロード党
オレ宇宙子のこと嫌いじゃないぜ「煩いネズミね!」友親?「あの世でおさらば!」インポータントなモノさ「絶対ヒプノよ!!」君は君の「むっちゃ帰らせる!」NO!ON!「アギ・ヴリトラ!”俺もね!”クロスローッ!」
…それが世界の”新限界”なら、君は君の”義満会”かもよ?

32、くろまめのらら
昆虫屋で働くキンモクセイは空飛ぶ車にうまく乗れず、昼寝すると妙な紋白蝶が現れ過去に導かれる。ところが幼馴染のららに「標本のチョウってガみたい」と罵倒され「このタ”ンボなんぼ?」と唾を吐かれる。そんな中、犬がうまそうにタイヤを噛みまくるパーキングで幼き日の自分と会う。

33、雑魚共
近未来。AIプログラムによる犯罪計画だけが能の前科七犯プチアイドルハーレーが山の穴で腹出しで昼寝するとズドン。家無しの妊婦アダチモリクミが降ってきた。翌日には全てDNAの異なる11ッ子が誕生。弱みを握られ脅されたハーレーは警察から隠れつつ匿い独自の教育「ロボ用」を施す。

34、ズッ友
警察馬のフウイヌムが見回りにビーチを訪れると犬に偽装した子ソイ連続誘拐猫のグラオーグラマーンを発見。声をかけるが飛行機河馬のリバイアサンがサーカス団蜻蛉のトゥーンボリを連れて助けに来た!ついに臍を露わにしたモデル蛙で新聞社蛙でスパイ蛙のゴリライモは何を記事にするのか!?

35、失われた地上を求めて
未来、有機サイボーグと化した人類が新奇層を中心に無境界変異体へ移行する中、星巡る地下知能路マーマの隙間に隠れる違法最古民シャンクの視聴覚兵士アークは「ある信号物質」を届けに形捨都市東京へ侵入。だがそこで地球の記憶を持つ女デゥラシャンに会いこの星の真実を知る。

36、UFO来訪
放課後野球でホームラン。レフトの広瀬が球を手に空を見ると巨大な穴。追うと土手で郷土研究部の十文字と住良木が騒いでいる。三人はいつも一人で小説を読んでいる南原オッドを呼び止め事情聴取する。しかし犯人は田んぼの中でゆっくりしてた鵜史飼さんで五人は喫茶店「麺」に行くことに。

37、クォーターワールド
2046年6月22日。七つの氷山大流星が海に落ち大陸は沈み星外生物が放たれた。生存人類は一握りの獣を連れ対流圏上部に築いた移動地平で太陽を追い海を見下ろす遊牧生活を始める。100年後、未だ閉ざす地上へ調査に降下した男アノルはエアバイクを銃撃され「ある島」に漂着する。

38、ドラゴンレーダー
アーティスティックな望遠レンズを発明したフィリップ・K・弦一郎が深夜、息子と河原を訪れ月を見れば十の影が横切る。続く足音に振り返ると光る画面を太鼓にドラミングする女連れの梅宮台正剛。彼女と息子そっちのけで月のケプラーとエラストテネスについて話をし、二人は別れた。

39、縁無井戸
22世紀の終わりに魔法化された科学に人間の闘争は無限大になり仮想時空を幾階層も定義すると自我も同様に誇大化した。しかし、無知を装うことはできる。今日集められた子供の身体は、記憶の机に宇宙井戸を引っ張り出して飛び込むと意識を集中させ、指先に来る星行く星を見て将来を占った。

40、聖者の行進
近未来。各国の旅行者で年中ごった返すため地元民は表裏があるなどと噂されるカメルーンはドゥアラからの軌道エレベータ「ソニックジラフ」に引率された日本の中学生佐藤は恋する綿谷に告白。そんな時ふと二人の頭上を定番のお土産「ブラックホール模型・アンティークタイプ」が漂った。

41、上官付き
未来。ペン持つ実験体タダシは科学結社ブランドをクビにされ麻薬の写経に手を伸ばすが、字を知らずTVを見にカフェへ。すると本物と区別できない映像で闘う服従女グラマーに撃たれる。”新おやつ食い苦行僧”と”英語好き男”も加わり、見た目がチートの”全身信号機”とBRCL栽培に乗り出す。

  • ツイート
  • ツイート
  • LINEで送る

関数(AU)さんの最新作品

関数(AU)さんの人気作品

もっと見る

投稿者情報

ファンレター

  • ファンレターはありません

ファンレター欄をもっと見る

TOP