「梅雨時くノ一〜アリス〜」
「くノ一たるもの、晴れの日は鍛錬、雨の日は勉学に勤しむべきであーる」
ヒゲをつけた先輩くノ一が言っていた。
誕生日に贈った高級つけヒゲが大層気に入ったようで、心にもダンディズムがほんの少し芽生えた・・・みたいであーる。
別に雨の日だからと言って晴耕雨読と言うわけではなく、雨に打たれながらの任務や訓練もあるのだが、どちらもお休み。
近所の図書館に来てみた。
「あなたは露出の激しい装束を着て、さらに猫耳をつけると言う恐ろしい事までしているのに、言動が固すぎますね。パーツは豊富なんですから、もっとカワイコぶってくださいね」
ただの仕事着と、索敵用のセンサーなのに何を言っているのだ、あの食いしん坊は。
それなのに、カレー屋で頼んだ大盛りを食べ切れず、
「私は食いしん坊だけど食べる量は常識的ですよ、えっへん」
などと言って、スマホでケラケラ笑いながら私達を応援に呼んだと思ったら、
「引退して、ココイチの横にクノイチってカレー屋出したらウケますかねぇ?」
とか言い出して、後ろの席の敵を追跡中というのを知った時に、私と蓮霧(れんぶ)の血の気が引いたのを知っているのかっ。
そっちこそ、頭領に次ぐ「桃忍(ももにん)」の二番手という自覚を持って欲しい。
嗚呼、ダメだ。
せっかく子どもの頃に読んだ『不思議の国のアリス』を、懐かしいなと思って読み始めたのに、仕事が気になってあの魅力的な世界に行けないや。
私は心も大人になってしまったみたい、アリス。
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