「■ ゆるしてあげない ■ 」

  • 1
  • 306
  • 0
  • 公開日 2023年07月23日

20××年、犯罪はいよいよ苛烈を極めるようになった。政府はその対策として「加害者酷使法」を制定する。

傷害や殺人など、人を直接傷つける犯罪を犯した者は、被害者や遺族の希望により、刑務所へは入らず、彼らの奴隷となり刑期を過ごすという法律だ。

ただし実際に奴隷となるのは、犯罪者の記憶や人格を移植した生体アンドロイドである。アンドロイドの頭からはケーブルが伸びており、その先端のグリップには使用者を識別する生体センサーがついている。

アンドロイドは使用者の言う事を何でも聞かなくてはならず(犯罪や他人を傷つける行為を除く)、使用者は殴る蹴るの暴行を加える事も許される。アンドロイドなので破損する事はないが、痛みは電気信号となり電子頭脳を苦しめた。実際の受刑者は刑期を終え出所する時に、アンドロイドの電子頭脳が味わった負の感覚を逆移植される(死刑囚の場合は定期的に)。

また逃亡を防ぐために、使用者がグリップを離すとアンドロイドは機能停止する。

アンドロイドと使用者は多くの人の目に晒されるため犯罪抑止効果は抜群となり、これまでは加害者の罪の軽さに泣いた被害者、遺族の処罰感情もある程度解決する事となる。

またアンドロイドの人権を訴える裁判も争われたが、アンドロイドはそもそも人間ではないので、彼らの人権は最高裁でも否定された。

  • ツイート
  • ツイート
  • LINEで送る

一会柿さんの最新作品

一会柿さんの人気作品

投稿者情報

TOP