NOVEL DAYS × tree 2000字文学賞 「家族小説」結果発表
NOVEL DAYS × tree
2000字文学賞 「家族小説」
結果発表!!
受賞作
ラゴス
家族とは何かという問いは、やさしいようでいて実はたいへんむずかしい問いかけです。
特に、家族でなかった人たちが家族になるというのは、当たり前のことではありません。
本作は、それについての戸惑いや発見を、「音」というモチーフを用いながらえがいた作品です。
「家族」というものをパズルのピースにたとえる主人公の心の動きが実に自然で、あたかも自分が主人公に成り代わったかのように、彼女の過ごす日々が鮮明に目に浮かんできます。
そうした技巧や筆力に優れているのはもちろんのこと、「家族」という言葉に自然な温かみを感じさせてくれる、家族小説らしい家族小説でした。
全体講評
今回も多数のご応募ありがとうございました!
さて今回のテーマである「家族」ですが、一口に家族と言っても様々な家族観があります。血は繋がりはなくとも仲睦まじい家族、犬や猫を子供や兄弟同然に想っている家族もいます。最近では、性や年齢等にとらわれない様々な形の家族の形が広く認識されるようになってきています。
そういった新しい価値観の下で、どの作品も個性的な家族を描きつつも、それでも確かに1つの家族なのだと伝わってくる作品ばかりで、著者の筆力に驚嘆させられました。また、物語に強いメッセージ性が込められた作品も多く投稿されており、選考中に心揺さぶられ、不覚にも目頭が熱くなってしまったことも一度や二度ではありませんでした。
間違いなく、今回も傑作ばかりです。是非、様々な家族の物語を読んでいただきたいです。
優秀作品
惜しくも受賞には至りませんでしたが、ぜひとも読んでほしい作品を紹介します。
家族になれないわたしたち 西荻麦
マイノリティならではの受難を提起しつつ、お互いの関係性がいざというときには普段と逆転し、お互いを支え合う力を発揮するという、素敵な家族の話です。
家族になる にしであや
本作は、急遽引き取ることになった幼い甥っ子との距離感に戸惑う主人公が、不意に得たブレイクスルーが感動的です。
置き土産 mitamitaango
優秀だが身勝手な兄に対して複雑な感情(主に反発心)を抱いていた努力型の妹が、兄の置き土産を手にして抱く、やっぱり複雑な感情。味わい深い兄妹の物語です。
佳作紹介
選考者が気になった作品をさらにいくつか紹介します。
バニラの瞳(2000字家族) 半径100m
どんな時も家族と一緒だったバニラの幸せな一生に、思わずほっこりしました。
線香花火 野本 さとみ
命の儚さを線香花火になぞらえるのは王道ですが、家族小説に上手く取り入れた作品した。
母さんの習い事 北きつね
体の自由が利かなくなっても娘に向け、必死に何かを残そうとする母の愛情に感動しました。
祖父とコメ子の物語「祖父と晩酌」 KOMEKO
楽しかった祖父との記憶と、小さく感じるバスタブに寂しさを覚える描写の対比が上手かったです。
家族のカタチ ヱリサ
伏線が素晴らしい。構成が見事な作品でした。
家族の中心 Rei-Mitsui
生活の何もかもを支配してしまう、猫の恐ろしさがよく表れている作品でした。
親になる 麦人
前半は無機質な主人公が、子供が生まれてからは情緒豊かになっている点が微笑ましかったです。
かき氷 ヒトミカン
不器用ながら、とても優しい「父」との思い出に強く感動しました。
リサイクル 深緑白
親の心、子知らずを地で行く作品ながらも、あったかい気持ちになれる作品でした。
踏み絵 音野内記
自分を犠牲にしてでも家族を助けようとする父の強さが上手く描かれていました。「僕」のやるせなさが良く伝わってくる結末の表現も素晴らしかったです。
妹を思う、ゆえに兄あり 20201021
妹の才能に惚れた兄が妹に道を譲るところに強い兄弟愛を感じました!
無人駅 椿 脩(ツバキ シュウ)
血の繋がりがなくとも、自分を想ってくれる人こそが家族なのだという考え方が素敵でした。
カレーライス 加藤雄三
不器用ながらも助け合い、なんとか距離を縮めることに成功した親子の様子に思わずほっこりしました。
ババ子家庭 ダンゴ
少年のこれからに幸あれ、そう願わずにはいられなくなる作品でした。
こんな夜は flower11
娘が結婚してしまう父親の心境がとてもリアルでした。
何よりも誇らしく 坂井
最後の光景がありありと目に浮かんできて、思わず涙ぐんでしまいました。