2000字文学賞 「恋愛小説」結果発表

NOVEL DAYS × tree

2000字文学賞「恋愛小説」

結果発表!!

 

 

受賞作

 

マッチ売りの少女

たぬぽん

わずか2000字のなかに、ひとつの人知れぬ恋の始まりから終わりまでがすっと語られており、高い構成力を感じさせられました。

作品中に常に香るほろ苦い雰囲気と、マッチ売りの少女というモチーフが呼び込むはかない予感が、大人向けの読み味を演出しており、読後感もとても優れていました。

大人の恋の顛末をしっとり描いた良作でした。

 

 

全体講評

今回も多数のご応募をいただき、ありがとうございました!

青春の間の甘酸っぱい恋愛、大人のビターな恋愛、老いてなお心に残る色あせない思い出の恋愛など、本当に多種多様な恋愛模様が描かれていました。

中でも、近年セクシュアリティに関する多様性への認識が世間に広まり、受容されつつある中で、それを誠実に物語に落とし込んでいる作品が少なからずあり、大変感銘を受けました。

ご応募いただいたどの短編も、短い中で恋愛という人の営みの美しさや素晴らしさを感じさせられる、粒ぞろいの作品ばかりでした。

ぜひ読者の皆様も、この機に様々な恋愛物語をお楽しみください。

 

 

優秀作品

惜しくも受賞には至りませんでしたが、ぜひとも読んでほしい作品を紹介します。

 

見えない糸    山岸マロニィ  

親になっても、年をとっても、恋愛感情とよぶにふさわしい思いを持ち続けることの美しさを感じさせてくれる作品。

主人公がキーアイテムを取り出したときの、父の行動が、実に泣けます。

 


彼は空気    肴

「空気」というと、普通は存在感のないものに対してなど、どちらかというとネガティブなイメージを伴って用いられるたとえですが、本作ではそうではありません。

円熟の域に達した恋人たちの、心地よい自然な気遣いと関係性に、読んでいて心が洗われました。

 


   Miyabi 

悲惨な戦争から帰還した復員兵の視線で描かれる物語は、すべてが過去形で、物に拠って語られ、一貫して「手に触れることのできないもの」として描かれています。

あまりにも物悲しく、胸を打たれる、悲恋の物語です。

 


溺れる奇麗な白魚へ    宮村 祥

同棲中の恋人のちょっと変わった行動を目撃して、これまで知らなかった一面を知るという、ちょっといい感じの恋人たちの一コマを描く作品です。

恋愛に限らず、日常にマンネリを感じている方に、ぜひ読んでいただきたい作品です。

 

 

佳作紹介

選考者が気になった作品をさらにいくつか紹介します。

 

大食い少女と少食少年 さく 

花より団子を地で行く「私」が突然好意を自覚するところの初々しさが実に微笑ましい作品でした。

 

 

「ありがとう」って言うと死ぬ病気 いそべ 

口下手さを上手く恋愛要素に組み込んでいると思います。「私」と「三瀬君」の純粋さなんかも上手く表現されていました。

 

 

レベルアップ 溝口智子 

突然親密度が出てきたのはやや面食らったのですが、コミカルな性格の主人公だったからか、あまり違和感を感じませんでした。また、それが後半にきちんと生きていて、伏線の回収が見事でした。

 

 

餃子と写真週刊誌 西乃狐 

パパラッチを利用するアイデアが面白かったです。年下の妻の手のひらの上で転がされる年上の旦那というのもリアルでした。

 

 

チャイを飲みながら このはな

潔く恋を諦めながらも、少しでも好きな人に近づきたいという、複雑な乙女心が上手く描かれていました。

 

 

どんまい 西乃狐 

失恋に気を取られていて、新しい春のチャンスに気付いていない「俺」の様子と、さらっとチョコを渡したり、距離を詰めている「結奈」の対比が良かったです。

 

 

お支払いは手作り弁当で 本宮晃樹

唐変木ながらも、なんとか最後は踏みとどまった感が良く出た作品だと感じました。

 

 

その指が示す行為を私は知っていた 安芸 空希 

読んでいて背徳感をかきたてられる感じがとてもよかったです。

 

 

時間を戻したい 西乃狐 

オチが何より良かったです。主人公にやや青臭さを感じましたが、最後にかなりの漢気が見えて、とても好感が持てました。

 

 

コーヒーを飲む。 masarusi-

彼女の頼もしさ?もさることながら、自分の好意などおくびにも出さずに彼女を応援する「俺」が切ない、ビターな作品でした。

 

 

母と車窓とヴァン・ヘイレン いち

恋愛と現実感の合間で今一歩振り切れなかった女性がリアルでした。たまたまですが、ヴァン・ヘイレンへのフォーカスに不思議な偶然を感じました。

 

 

火曜日のりょーくん ゆにこ

「りょーくん」の設定が現代ならではの発想だったのと、伏線が上手く張られていて、ストーリーだけでなく構成も面白い作品でした。

 

 

モノクローム 御桜真

「俺」のかなり初心なところが初々しく、かわいい作品でした。

 

 

嘘と逆光 ラゴス

好きな人に真正面から好きと言えない、少女のままならない性別のもどかしさがリアルに描かれていました。

 

 

名もなき愛の中で 石蕗 景

セクシュアリティを上手く作品に落とし込んでいます。心と心で確かに繋がっている二人が素敵な作品でした。

 


 

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