NOVEL DAYS × tree 2000字文学賞 「ファンタジー小説」結果発表

NOVEL DAYS × tree

2000字文学賞 「ファンタジー小説」

結果発表!!

 

受賞作

 

魔法使いの息子

土井紀和

ファンタジーの中で描かれる魔法使いの中には、一種の陰を持った魔法使いがいます。

そういった造形をされた魔法使いは、神秘を司る者として、(作品世界にもよるのですが)非常に魅力的な存在になる場合があります。本作で描かれる魔法使いは、まさにそういった魔法使いの典型と言っていいかもしれません。

舞台となる世界をひとつのファンタジー世界として確固として構築した上で、その中に生きる上述のような仄暗い魅力をまとった魔法使いたちの、「ありそうな」苦悩と抜け出し難い連鎖、そしてそれでも少し前に進んでいると感じさせるひとすじの希望までをも描き出しているのは見事の一言です。

作り出された世界とそこで語られる物語の組み合わせ妙において、受賞にふさわしい作品でした。

 

 

全体講評

多数のファンタジー作品のご応募ありがとうございました!

ファンタジーには、完全に現実と異なる世界を構築し、その中でストーリーが進むハイ・ファンタジーと、現実世界に非現実的な要素を導入してストーリーを展開するロー・ファンタジーがあります。

ハイ・ファンタジーは、世界観の構築や説明にどうしてもある程度の文字数を取られてしまいます。そのため、今回のような短編の場合、どうしても物語の中の一シーンを切り取ってこざるをえないのですが、今回応募された作品はどれもその一シーンの選択が秀逸で、書かれていないその前後の活躍までも強く想起させてくれる作品ばかりでした。

ロー・ファンタジーの作品も、現実世界におけるファンタジーを丁寧かつ落差を意識して描写し、日常の中の非日常というジャンルの魅力をめいっぱい引き出している作品ばかりでした。

バラエティーの豊富さでいえば、これまでで1,2を争うものでした。どの作品も個性溢れる作品ばかりなので、ぜひともお読みください。

 

 

優秀作品

惜しくも受賞には至りませんでしたが、ぜひとも読んでほしい作品を紹介します。

 

真王の由縁 汎田有冴

正統派ハイ・ファンタジーに真正面から挑み、多層的な構造で仕上げた意欲作。ドラゴンの托卵など、盛り込まれたアイデアも面白いです。

 

レターズ・ヒーロー 山口波子

こちらは逆に、ロー・ファンタジーの面白さを追求した作品です。ファンタジー要素として誰もが知る童謡を持ってくるという発想も楽しく、エンターテインメント性の高い作品に仕上がっていました。

 

飛竜の再就職 けむちゃん

次から次にアイデアが飛び出してくる、ある意味大喜利のような作品で、読んでいて愉快な気分になりました。自由な発想も光っています。

 

お父さんは異世界勇者さま hanamaru

まず、視点の置き方が素晴らしいですし、その視点人物への感情移入のさせ方も見事。読者の期待に沿いながら予想を裏切り、しかもその裏切り方に納得感があります。オチもいいです。大変レベルが高い作品でした。

 

 

佳作紹介

選考者が気になった作品をさらにいくつか紹介します。

 

わたしの家には妖精がいる 宮杜有天

どこか親近感を感じさせるロビンとのやりとりに心がほっこりしました。

 

そこから先は誰も知らない てこ/ひかり

物語の引きが大変良い作品でした。

 

夏の日の少年 水無瀬ケンジ

時事を捉えて、上手く作品に落とし込んでいる点が良かったです。

 

とある転生者の日記 超小兎

まさかのどんでん返しとそこからの主人公の絶望がよく表れていました。

 

紙の竜 蒼真まこ

ラルフの竜への強い執着が、読者にきちんと伝わってくる良い作品でした。また読後感も大変良かったです。

 

フィルムカメラ 由有

見ず知らずの母を主人公の幼少期の姿に重ねる事で親近感を覚えさせるというアイデアが良かったです。

 

箒から輝く メグ

ファンタジーながら現実感のあるストーリーで、情景描写にも優れていました。

 

彼の奇妙な仕事 Suzette

漢気溢れる「俺」が魅力的な作品でした。

 

永久の救世主(とこしえのメサイア) 伊賀谷

壮大な物語の始まりをしっかりと感じさせる作品でした。

 

ゴーレムの目にも涙 莉瑠

子どもならではの無邪気さとゴーレムのか弱さが上手く描かれており、人と魔物のやりとりにほっこりしました。

 

時の神殿にて 夕藤 さわな

親子の愛に思わず心揺さぶられる作品でした。

 

勇者の死を報じる世界 成巳 龍太郎

巫女の勇者への想いと絶望の中でもせめて務めを果たさんとする健気さがとても魅力的でした。

 

世界旅行記 にしであや

ドアtoドアならぬトイレtoトイレの世界旅行というアイデアは秀逸でした。

 

聖ロンギヌスのちょっとした物語 佐藤子冬

厳かな雰囲気に溢れる上品な作品でした。

 

 

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