「小説『続・桃紅柳緑──アイツと一緒にいる意味と、独りでも戦う理由──』」
小説『続・桃紅柳緑──アイツと一緒にいる意味と、独りでも戦う理由──』著・当麻咲来さん
https://estar.jp/novels/25776855
P14~
【第一章(11)】挿絵描かせて頂きました。
https://estar.jp/novels/25776855/viewer?page=14
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「おお、うまそ」
俺が一個摘まんで食べると、アキは俺の顔をじっと見ている。
上品な甘さと酸味を味わうよりも……なんでそんな可愛い顔してるかな。てことの方が気になる。じわっとドキドキする感覚が胸に湧いてくる。
「うん、旨い。アキも一個食べてみなよ」
ちょっとドキドキしつつも、俺はためらうことなく、サクランボを一対取り上げてアキの唇に運ぶ。
「はい、あーんして?」
いたずらめかして笑うと、一瞬アキは視線を落とす。仄かに頬が色づくのを見て、ドキドキはもっと高まってしまう。
でも恥ずかしいのか、口はなかなか開いてくれない。
思わず、持っていたサクランボを自分の方に戻して、対になった一方をパクリと食べてしまう。
「あっ……」
咄嗟に、無意識だろう、目の前で好物を盗られてムッとした顔をするアキを見ながら、思わず笑いがこみあげる。
「半分上げる」
そう言うと、キスをする時みたいに、唇を寄せる。俺の咥えているサクランボの対のサクランボが、アキの唇に触れる。
一瞬ためらったアキが瞳を伏せたまま、唇を開き、そのサクランボを口に入れるから。
なんだかかぁっと熱がこみあげてきて、俺はとっさにアキの手を握り締めると、そのままアキの唇を奪う。
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小説お借りしています。
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